1997年のルワンダで、ジェノサイド実行者の残党が寄宿学校を襲い、10代の女子学生17人を捕らえ、少女たちにフツ族とツチ族に分かれるよう命じたところ、彼女らは「自分たちはただルワンダ人である」とこれを拒み無差別に射殺された話[36]を紹介し、「一見、単なるナショナリズムの発露のようにみえる」がその裏で、「死の虚無を見据えながらも、『偶然にくる或る不幸』(藤田)[37]を事もなげに引き受けてしまえる意思が働いている」ことを看て取り、「これこそがナショナリズムに内在しつつ、ナショナリズムを超える自由の可能性...

生の意味や社会や文明が、たかだか死の恐怖によって支えられているにすぎない...

宮崎哲弥