4.06.2011

原子力戦争 田原総一郎 ー彼はどうしてしまったのか?

ドキュメンタリーノベルというだけあって、豊富な資料にもとづいた展開で、いろいろな箇所に田原氏の原発に対する考えがわかる。
関西電力美浜原発の燃料棒事故、東電福島原発の火災をメインテーマにすえて、官僚支配に対するテレビ局のディレクター大槻の戦いが描かれる。
文庫本は、1981年刊行だが、すでに現在よく原発の議論にでてくるキーフレイズ、たとえば、原発はトイレのないマンション、プルトニウム社会は超警察管理社会にならざるを得ない(ラルフネーダー)などが出てくる。また、原発の議論は、推進派、反対派ともに、諸外国でおこなわれてきたものの焼き直し、コピー、孫引きコピーであることもわかる。そのため、日本ではあまり白熱した展開にならず、ひたすら米国における展開待ちという指摘はもっともだ。
 小説という形を借りているため、推進派の登場人物にも思い切った本音の発言をさせているように思われる。
 以下、印象に残ったキーフレイズは、
 原子力産業により、占領軍により解体された財閥が復活した
 生態系を破壊するとされる温排水の総量は、日本の全河川の総水量とほぼ同じ
 福島の原発地帯では、東電が地域情報連絡会議という組織で、TCIAを組織し、きびしい情報管理をおこなっている
 
 東電のいう無事故とは、事故をなくすことではない。事故が起きてもそれを闇に葬り去って、外部に公表しないことだ。
なかにでてくる東南アジア 再処理工場計画が今も進行しているのかどうかが、気になる。
原子力戦争 Lost Love(1978)という映画もあるが、内容はかなり違う。
 田原総一郎原作の同題名小説の映画化。脚本は「こちら葛飾区亀有公園前派出所」の鴨井達比古、監督は「祭りの準備」の黒木和雄、撮影は「ある機関助士」の根岸栄がそれぞれ担当。
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この本で述べられている東電の隠蔽体質は、最近の東北関東大震災の際にも指摘され、2002年にも大きな問題になっていたことが報告されている。
2002829日「経済産業省原子力安全・保安院から県に18枚のFAXが送られる」
内容は「福島第一・第二原発で、原発の故障やひび割れなどの損傷を隠すため、長年にわたって点検記録をごまかしてきた」と書かれていた。
炉心を支えるシュラウドと呼ばれる重要部分の損傷まで隠ぺいしていた事態に、国民は驚き呆れ、東電は平岩外四、那須翔、荒木浩、南直哉の歴代社長が総退陣、恭順の意を示した。
保安院は立ち入り調査することなく「こんな告発があるけど」と東電に紹介、調査は東電に任せて「調査の結果、告発内容と一致しなかった」という東電報告を受けて、口を拭っていたのである。

情報を閉ざしてしまうこと、その情報が正しいかどうか判断する手段を奪ってしまうことが、いかに恐ろしいか。

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